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小説「冴子」その88

小説「冴子」その88

夜明けの頃は
とても寒くて
火に近づきました。

昨日汗をかいて
下着が濡れたためかもしれません。

凍れる程寒い中
北の空は
明るくなっていました。

まだまだ燃えているのです。

水道が
でないので
消火栓から水が出ません。

全く
消防隊は用をなしません。

燃え放題で
それを見て
また冴子は
涙しました。

そんな北の空を見ていると
「あなたは
冴子さんではないですか」と
呼ぶ声があります。

冴子は聞き覚えのある声です。

声の方を見ると
勇治の両親です。

岡山から
自動車でやって来たのです。

昨日
朝に
電話をしたけど
連絡が取れなかったので
いろんなものを積んで
車で出発したそうです。

姫路辺りまでは
高速できたのですが
不通になっていて
一般道も混んでいて
夜遅く着いたそうです。

付近の人に聞き回って
冴子のところに
やって来たそうです。

勇治の母親は
冴子に
勇治のことを聞きました。

冴子は
義理の両親をみて
泣き崩れました。

冴子は
「勇治さんは
まだ店の中にいます」と
言うのが精一杯でした。

両親は
それを聞いて
立っていられず
その場に
崩れるように
倒れ込みました。

「あの火の中に
今もいるのか」と
激しい口調で
父親は
冴子に言いました。

「あなたは
助けに行かなかったのか」と
あとになっては
八つ当たりのように
言い放しました。

冴子は
ただただ泣き崩れるばかしです。

夜が明けて
数時間
そんな状態でした。





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