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小説「冴子」その87

小説「冴子」その87

国道まで連れてこられた冴子は
お店の方を見ました。

もう黒煙と
その間から見る炎が
見えました。

もう
店には
行く事ができないのは
誰の目にも
冴子にも
理解できました。

焦げた
何とも言えない臭いが
周囲を
覆いました。

「勇治の声が
聞こえた」と
河本さんに
言いました。

でも
横に
河本さんがいるとは
言えませんでした。

言ったところで
助けに行くこともできないのです。

冴子は泣き崩れました。

冴子は
帽子を被っていましたが
出ていた髪の毛は
焦げていました。

河本さんの母親は
地面に座り込んで
じっと
店の方を
眺め
涙を流していました。

父親は
たちすくむのが
やっとです。

ふたりの兄は
他の人を助けるために
他の場所を掘っていました。

炎を見ているのがつらいのでしょう。

炎は
日が傾く夕方になっても
衰えることはありません。

国道まで
炎がせまったので
冴子や
河本さんは
後退を余儀なくされました。

夕食は
河本さんが持ってきた
おにぎりを
食べました。

じっと
この場で
店を見たいけど
見たくないような気もします。

夜も更けてきても
状況は変わりません。

河本さんは
一度
北野の家に帰ることになりました。

冴子も
一緒にと言われましたが
そんな気にはなれませんでした。

余震が続くので
外で
たき火をして
すごしている人の近くで
一晩すごしました。



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