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小説「冴子」その97

小説「冴子」その97

「ご遺体は
検視のあと
○○寺に
安置されます。

安置されるのは
今夕です。

身元が判明次第
引き渡しますが
専門の歯医者さんが
忙しくて
判明までは
相当時間を要します。

引き渡しは
早くても
明後日以降だと思います。」
と
付け加えました。

担架に載せられ
警察の車で
西の方へ
走り去るのを
ズーと見ていました。

冴子は
歯形を
調べなくても
その遺体は
勇治と
河本さんに違いないと思いました。

遺体があった場所には
見慣れたパン焼き釜と
冷蔵庫
発酵槽が
焼き焦げてありました。

あの間に挟まれて
地震にあったその時は
助かっていたんだと
思いました。

あの
勇治の声は
確かに
聞こえたんだ。

はっきりと
聞こえたんだと
改めて思いました。

きっと
河本さんは
少しケガをしたか
何かに挟まれて
痛かったに違いないと
思いました。

それが
うめき声として
聞こえたに違いないともいました。

きっと
ふたりは
最後に
私が勇治に呼びかけた時まで
生きていて
私の声を
聞いたに違いないと
思いました。

そして
私が
炎のために
その場を去って
それから
その炎が
ふたりの命を
奪ったに違いないと
確信しました。


「勇治
ごめんね」と
独り言を
言うのが
精一杯でした。






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